視覚・記憶障害からの挑戦|生活を整えるリハビリと自立
人生の途中で突然、病気や障がいに見舞われたとき。
本人やご家族の頭に真っ先に浮かぶのは「今まで通り働けるだろうか」という強い不安や焦りだと思います。
しかし、障がいを負った後のリハビリにおいて重要なのは、焦ってすぐに働くことを目指すより、まずは「日々の当たり前の生活」を一人で送れるように整えること。それが結果的に、自立への一番の近道になることがあります。
今回は、重度の視覚障害と記憶障害を負いながらも、身近な生活の自立から「国家資格の取得」という新たな夢に向かって歩み出した20代男性の事例をご紹介します。
視覚障害・記憶障害の発症と「自立したい」という想い
20代の男性Aさんは、脳損傷の後遺症により、両側の見えづらさ(皮質盲)と記憶障害が残りました。
身体の麻痺はありませんが、視力は文字の読み書きが難しいほど低下し、日付や予定、時間の感覚が曖昧になってしまう状態でした。
病前のAさんは、アルバイトや料理、大好きなカフェ巡りを楽しまれていました。実家で過ごす中で「また働きたい」「一人で電車やバスに乗れるようになりたい」という強い思いを抱えていましたが、過去に道に迷ったり転倒した経験があり、ご家族も安全面への不安から一人での外出には慎重にならざるを得ない状況でした。
「また働きたい」という目標に向かうために、まず必要だったのは日々の生活をご自身の手でコントロールすること。そのために「スマホを活用した工夫」と「安全に外出するための訓練」からスタートしました。
スマホの音声機能を活用した「忘れない仕組みづくり」

記憶や見えづらさの課題がある中で、どうすればスケジュールややるべきことを管理できるか。
私たちが最初に取り組んだのは、スマートフォンに搭載されている「音声機能」の活用でした。画面を見るのではなく、「声で入力し、耳で聴く」という方法です。
「今日やること」や「メモ」を声で吹き込み、それをスマホに読み上げさせる習慣を、施設の中で何度も練習しました。
見え方に頼らず「聴く」ことでスケジュールを把握できるようになると、次第に「予定を忘れてしまうかもしれない」という不安が和らいでいきました。
17kmの道のりを一人で、段階的な移動訓練
次に取り組んだのは、徒歩・バス・地下鉄を乗り継ぐ「一人での移動訓練」です。
ご自宅から目的地までは約17km。人混みや複雑な交差点、時差式信号など、視界が見づらい状態での移動には危険が伴います。作業療法士や理学療法士といったリハビリの専門職が、天候や時間帯による見え方の変化、障害物を避ける能力、道順の覚え方などを細かくチェックしていきました。
訓練は少しずつステップアップしていきます。 まずは施設の周りを歩くことから始め、次は最寄り駅、そして交通量の多いエリアへ。スタッフは常に少し後ろから見守り、万が一の危険を防ぎながらも、「自分自身の判断で歩く」という体験を重ねてもらいました。
「やりたいこと」を取り戻す中で生まれた自信

生活の土台が整っていくにつれ、Aさんの中から「またお菓子を作りたい」「カフェに行きたい」という、本来やりたかった気持ちが自然とあふれ出てきました。
お菓子作りでは、音声機能で材料や分量を確認し、包丁や火を使う場面は触覚(触った感覚)や手順の整理でカバー。買い物でも商品の探し方や支払いの動きを一つひとつ確かめながら練習を続けました。
すると、大きな変化が生まれます。
Aさんはバスと地下鉄を乗り継ぎ、一人で施設へ通えるようになっただけでなく、大好きなカフェ巡りも再開。市内のスターバックスを制覇したり、自分で作ったお菓子をSNSに投稿したりと、生活の楽しみがどんどん広がっていきました。
さらには友人を誘ってテーマパークへ行ったり、25kmのサイクリングに挑戦したりと、以前よりも積極的に外出するようになったのです。
「自分一人でも出かけられる」 「工夫すれば、やりたいことはできる」この実感が積み重なったことで、Aさんの中に「自分なら大丈夫」という大きな自信が芽生えていきました。

「生活の再建」の先に芽生えた、新たな夢
生活が豊かになり、自分らしさを取り戻したAさんは、自ら次のステップを決意します。
「あん摩マッサージ指圧師の国家資格を取りたい」
視覚障害を持ちながらも、触覚や聴覚を最大限に活かし、プロとして社会で活躍する道を選んだのです。現在は専門学校への進学に向けて、授業や試験に対応するための準備を進めています。
SHAREが大切にするリハビリテーションのあり方
もし発症直後に「就労」という結果だけを急ぎ、型にはまった訓練ばかりを行っていたら、ここまでの挑戦は生まれなかったかもしれません。
- 障がい特性に応じた適切な「工夫(代償手段)」を一緒に見つけること
- 安全を守りながら、ご本人の「やってみたい」を形にすること
- 「できた」という手応えを一つずつ重ねていくこと
- 日常生活を整え、人生を楽しむ心を取り戻すこと
こうした土台があってこそ、人はもう一度前を向いて歩み出すことができます。
SHAREはこれからも、単なる機能回復や支援にとどまらず、一人ひとりが自分らしく暮らせる人生の再建を、ともに寄り添いながら支えてまいります。
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「全ての人が、かっこよく歳を重ねられることを証明する。」というミッションに魅力を感じ、株式会社SHAREへ入社。 一人でも多くの方にサービスの魅力や可能性が届くよう、日々情報発信に取り組んでいます。
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