「年だから」で諦めない在宅医療|札幌「なぎの木」石部先生が大切にする、その人の願い
「これからも、自分で買い物に行きたい」
「できるだけ長く、家のことを自分で続けたい」
病気や障がいがあっても、年齢を重ねても、一人ひとりの暮らしには大切にしたいことがあります。
その願いに、医療はどのように関われるのでしょうか。
今回は、札幌市厚別区の「よりそう訪問診療クリニックなぎの木」の石部正和先生にインタビュー。
開業に込めた思い、リハビリテーションの視点を生かした診療、そして地域で目指すチームのあり方を伺いました。
お話のなかには、私たちSHAREが大切にしている「その人が望む暮らしを支える」という思いと、重なる視点がありました。
※本記事はインタビューをもとに、発言の趣旨に沿って構成・編集しています。編集部による要約や関連情報は、石部先生の回答と区別して記載しています。末尾の「取材を終えて」は、SHAREの視点による感想です。
この記事で分かること
石部先生が開業に込めた思い
リハビリテーションの視点を生かした訪問診療
ご本人・ご家族の選択を尊重する関わり方
訪問診療を相談するタイミング
なぎの木とSHAREに共通する、地域の暮らしを支える視点
看取りを支えることも、これからの暮らしを支えることも

――クリニックの開業には、どのような思いがあったのでしょうか。
石部先生:
一番は、患者さんのさまざまな願いや望みに応えられる在宅医療を、札幌で届けたいという思いでした。
在宅医療や訪問診療は、終末期の文脈で語られることが多いと感じています。最期まで住み慣れた場所で過ごしたいという願いを支えることは、とても大切です。
私たちも、そこを担っていきたいと思っています。
一方で、在宅医療を受ける方の願いは、それだけではありません。
「もっと良くなりたい」
「今の身体の状態を維持したい」
「買い物の習慣を続けたい」
そうした思いを持つ方もいらっしゃいます。
これまで在宅医療に関わるなかで、こうした願いへの支援には、まだできることがあると感じてきました。
「年だから、しょうがないよね」で終わらせず、栄養やリハビリテーション、薬の調整などを通じて、何かできることはないかと考える。ご高齢でも、適切な支援によって状態が良くなったり、活動の範囲が広がったりする方はいらっしゃいます。
その人がこれからどう暮らしたいのか。その願いを支える在宅医療を実現したいと思っています。
「何をしたいか」と「今、どう動けるか」を一緒に見る

――リハビリテーションに携わってきたご経験は、日々の診察にどう生きていますか。
石部先生:
リハビリテーションでは、目標を設定し、そこに向かって何が必要かを考えます。ですから、まずはご本人が何をしたいのかを知ることが大切です。
同時に、その目標に向かうために、今どのような状態なのかを把握する必要があります。筋力だけではなく、実際の動作や認知機能、心の状態も含めて、全体を見ることを意識しています。
例えば初めて診察する方であれば、歩く様子や、立ち上がる様子を見ます。歩くことが難しい方でも、ベッドからどう起き上がるか、どう座るか、どう乗り移るかといった動作を確認します。
暮らしのなかで「こうなりたい」という願いがあるとき、その実現には日々の動作が深く関わるからです。
さらに、動きにくさと病状がどうつながっているかも考えます。年齢や筋力の問題だけなのか、病気の影響があるのか。必要に応じて専門の医療機関への受診を提案することもあります。
すべてが改善できるわけではありません。
それでも、病状を整えることと、生活のしやすさを支えることを、一緒に考えていきたいと思っています。
ご本人とご家族の選択を尊重する

――患者さんやご家族と関わるうえで、大切にしていることを教えてください。
石部先生:
ご本人やご家族の思いを引き出すこと、そして、その方たちの選択を尊重することです。
例えば、自宅で暮らし続けるか、施設で暮らすか。長い時間をかけて迷い、決めてこられた方もいらっしゃいます。
そうした方に、「その選択を尊重しています。私たちもサポートしますよ」と伝えることで、ご本人やご家族の表情が明るくなることがあります。
施設で暮らすことを選んだ方にも、その決定を尊重し、私たちもサポートしていくという姿勢を伝えています。
ただ肯定的な言葉をかければよいのではなく、なぜ今、その方にその言葉が必要なのかを考える。小さな気持ちの変化も大切にしながら関わっています。
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ご本人やご家族の希望にどう向き合うかについては、こちらのコラムでも紹介しています。
→ リハビリで本人と家族の希望が違うとき、支援者はどう向き合うのか|支援現場で学んだ大切なこと
「食べる」を支えるために、全身に目を向ける

――身体を動かすことと、食べる力には、どのような関係があるのでしょうか。
石部先生:
食べることを考えるとき、飲み込みに関わる筋肉だけでなく、呼吸の筋肉も大切です。例えば、気道に入ったものを咳で外へ出すときには、呼吸筋の働きが関わります。
日頃から身体を動かし、呼吸筋に刺激が入る状態をつくっておくことは、大切だと思っています。呼吸も含めて、全身を元気にしておくということですね。
また、立ったり歩いたりすることで、首の周りの筋肉にも刺激が入ります。飲み込む練習だけでなく、立つ、歩くといった運動も、飲み込みに関わる筋肉にとって良いと考えています。
日常の会話から生まれる、チームの支援
――クリニック内では、どのように専門職同士が連携しているのでしょうか。
石部先生:
日々の会話のなかで、患者さんの話が自然に出てきます。
「あの方は今、どうですか」
「こういうことで困っていて」
「それなら、こうしてみたらどうだろう」
そういったやり取りです。
医師の視点に加えて、身体の動きを見る理学療法士、飲み込みやコミュニケーションを支える言語聴覚士、そして鍼灸師など、それぞれに専門性があります。
同じ場所で日常的に話し合えるからこそ、自分だけでは気づかなかった見方や、支援の方法が出てくることがあります。そうしたチームワークは、私たちの強みだと感じています。
また、その知識や経験をクリニックのなかだけにとどめず、地域の皆さんとも共有しながら、より良い医療や介護につなげていきたいと思っています。
通院が大変になったら、相談を考えるきっかけに
――訪問診療について、どのようなタイミングで相談するとよいでしょうか。
石部先生:
通院が大変になってきた、というご相談が多いですね。
ただ、「通院が難しい」と感じるタイミングは、人によって違います。ご本人はまだ大丈夫だと思っていても、実際には複数の方に支えてもらいながら、何とか通っている場合もあります。
例えば、受診が必要なのに、ご本人がクリニックへ行けなくなってきた。移動や付き添いの負担が大きくなってきた。そうしたことがあれば、訪問診療について相談していただきたいと思います。
また、リハビリテーションを受けたいという希望があり、通院も難しいので、訪問診療と合わせて相談したいという方もいらっしゃいます。そうしたご相談も歓迎しています。
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在宅でのリハビリや通所サービスなど、退院後の支援の選択肢を知りたい方は、こちらもご覧ください。
→ 退院後のリハビリ・運動はどこで続ける?医療・介護・障害福祉からフィットネスまで解説
地域の支援者と、患者さんを中心とした一つのチームに

――これから、地域でどのような連携を目指していますか。
石部先生:
患者さんを中心に、本当に一つのチームとして関われることを目指しています。
訪問診療では、すでにさまざまな方が支えているところへ、私たちが後から加わることも多くあります。だからこそ、これまで関わってきた皆さんと一緒に、良いケアを届けられる存在でありたいと思っています。
特定の相手とだけではなく、いろいろな医療機関や事業所の方と、そうした関係をつくっていきたいですね。
――最後に、訪問診療を検討している方やご家族へ、メッセージをお願いします。
石部先生:
医師が家に来ると聞くと、身構えたり、不安になったりする方もいらっしゃると思います。
私たちは、患者さんを応援するサポーター、パートナーとして関わりたいと思っています。安心と信頼を届けられるように、一人ひとりとの関わりを大切にしていきます。
安心して相談していただけたらうれしいです。
取材を終えて|SHAREが感じたこと
石部先生のお話を通じて、私たちSHAREが特に共感したのは、年齢や病気だけで可能性を決めず、ご本人がどのように暮らしたいのかを出発点にする姿勢です。
SHAREは、「すべての人がカッコよく歳を重ねられることを証明する」という理念のもと、運動やリハビリテーション、介護・障害福祉などを通じて、地域で暮らす方々を支えています。私たちも、運動や訓練そのものだけでなく、その先にある、一人ひとりが望む暮らしを大切にしたいと考えています。
また、患者さんを中心とした一つのチームを目指すという先生のお話も印象に残りました。それぞれの専門職が気づいた変化や、ご本人の願いを共有し、支援につなげていく。そのような連携を、私たちも地域で育んでいきたいと感じました。
なぎの木の皆さんや地域の支援者と共に、その人らしい暮らしを支えるために何ができるかを考え、日々の実践につなげていきます。
医療で身体の状態を整えることと、日常のなかで動くこと、外に出ること、誰かと関わること。その両方を地域で支えられるよう、SHAREも運動・リハビリテーションや介護・障害福祉の事業を通じて力を尽くしたいと考えています。
退院後の活動の場や、運動を続けるための支援など、地域の患者さん・利用者さんを支える連携について、医療機関・事業所の皆さまからのご相談もお待ちしています。
→ 「SHAREとの医療・地域連携について|取り組み・ご相談はこちら」
パートナーシップ|株式会社SHARE
株式会社SHARE|コーポレートサイトのパートナーシップページです。SHAREは産官学医の枠を超えた多様な協働を通じて、地域社会全体のWell-beingの向上を目指し、Well-beingの価値を広げ、持続可能な未来の実現に貢献しています。
sha-re.jp

よりそう訪問診療クリニックなぎの木へのご相談
通院の負担や、在宅での診療・リハビリテーションについて相談したい方は、クリニックの公式サイトをご覧ください。
よりそう訪問診療クリニックなぎの木|札幌市厚別区で2026年4月1日開院の訪問診療クリニック
札幌市厚別区の訪問診療クリニックです。2026年4月1日に開院しました。
naginoki-clinic.jp
総合病院での臨床経験を経て、株式会社SHAREに入社し、医療・健康・介護福祉の共創に励んでいます。 私たちが地域の皆様のお役にどう立てるか? 自治体・医療機関・地域にお住まいの皆様のお力をお借りし、これからも様々なことに挑戦してまいります。
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