ため息をつくと幸せが逃げる? ― 実は、心と体を守るために人は「ため息」をついている ―
「はぁ……」
思わずこぼれる、ため息。
それを聞いて、
「ため息つくと幸せが逃げるよ」
「そんな顔しないで」
と言われたことがある人も多いのではないでしょうか。
ため息は、昔から
- ネガティブ
- 弱気
- 後ろ向き
といったイメージを持たれがちです。
しかし実は、
ため息は人が不調に陥らないために備えている“自然な反応”
であることが、近年少しずつ知られるようになってきました。
ため息は、
気持ちが落ち込んでいる証拠でも、
やる気がない証拠でもありません。
それは、
今の状態を立て直そうとする、体からのサインなのです。
■ 「ため息=悪」という考えはどこから来たのか

ため息が否定的に受け取られやすい背景には、
日本ならではの価値観も影響しています。
我慢することが美徳
感情を表に出さないことが大人
前向きでいることが正しい
こうした空気の中では、
ため息は
「弱音を吐いている」
「場の空気を下げる」
ものとして扱われがちでした。
特に職場や家庭など、
人と一緒に過ごす場面では、
ため息ひとつで
「どうしたの?」
「機嫌悪いの?」
と受け取られてしまうこともあります。
ですが本来、
ため息は感情を表現するために生まれたものではありません。
■ ため息の正体は「深く吐く呼吸」
ため息の正体は、
とても単純です。
それは、
いつもより少し長く、深く息を吐く呼吸。
人は緊張やストレスが続くと、
呼吸が浅くなる
吸うばかりで吐けなくなる
胸や喉だけで呼吸する
といった状態になりやすくなります。
すると体は、
無意識のうちに
「このままではバランスが崩れる」
と判断します。
そこで起こるのが、ため息です。
ため息は、
👉「一度、ちゃんと吐こう」
👉「呼吸をリセットしよう」
という、体からの自然な調整反応なのです。
■ ため息が体にもたらす働き

① 緊張をゆるめる
息を長く吐くことで、
体は「安全な状態」に戻ろうとします。
心拍が落ち着く
肩や首の力が抜ける
体のこわばりが和らぐ
これは、
意識的に行う深呼吸とほぼ同じ働きです。
ため息は、
無意識に行われるセルフケアとも言えます。
② 頭をクールダウンさせる
考えごとが多いとき、
人は呼吸を止めがちになります。
仕事のプレッシャー
人間関係の悩み
先の見えない不安
こうした状態が続くと、
頭は常にフル回転し、
疲れが抜けにくくなります。
ため息は、
その状態に
一瞬の“間”をつくる行為です。
ほんの数秒でも、
呼吸が整うことで、
思考も少し落ち着きます。
③ 呼吸の偏りをリセットする
浅い呼吸が続くと、
肺の一部しか使われなくなります。
ため息のような深い呼吸は、
肺を大きく使う
空気の入れ替えを促す
呼吸の効率を回復させる
といった役割も担っています。
これは、
疲れにくさや集中力にも関係してきます。
■ ため息が増えるのは「弱いから」ではない
最近、
「ため息が増えた気がする」
と感じる人は少なくありません。
それは決して、
気持ちが弱くなったからではありません。
常に時間に追われている
情報が多すぎる
休んでいても頭が休まらない
正解を求められ続けている
こうした環境の中で、
心と体は知らず知らずのうちに
緊張を溜め込んでいます。
ため息が出るのは、
それだけ調整が必要な状態だということ。
頑張り続けている証拠とも言えるのです。
■ ため息は「止めるもの」ではなく「気づくきっかけ」
ため息を無理に我慢する必要はありません。
大切なのは、
ため息が出た瞬間に
少しだけ立ち止まること。
「今、呼吸浅かったな」
「ちょっと疲れてるな」
「緊張してたな」
そう気づくだけで、
体は少し楽になります。
ため息は、
自分の状態を教えてくれる
小さなサインなのです。
■ 意識的に“良いため息”をつく

自然に出るため息に加えて、
意識的にため息のような呼吸をつくるのもおすすめです。
やり方は簡単です。
鼻から静かに息を吸う
口から「はぁ〜」と音を出しながら、ゆっくり吐く
吐き切ったら、少し間を取る
これを2〜3回繰り返すだけ。
ポイントは、
しっかり吐くこと。
現代人は、
吸うことよりも
吐くことが足りていないと言われています。
■ ため息は「立て直すための合図」
ため息は、
諦め
ネガティブ
不幸
の象徴ではありません。
それは、
これ以上無理をしないためのブレーキ。
元気でいることよりも、
乱れたら戻れること。
そのための機能として、
人はため息をつくのです。
■ ため息は、幸せが逃げる音ではない
ため息は、
幸せが逃げる音ではありません。
それは、
緊張がほどける音
呼吸が戻る音
自分に戻るための音
です。
もし今日、
ふとため息が出たら、
それを責めずに、
もう一度ゆっくり息を吐いてみてください。
健康は、
特別なことをすることで得られるものではありません。
こうした小さな調整の積み重ねが、
日々の調子を支えています。
ため息は、
その始まりを知らせてくれる
とても人間らしい反応なのです。
はじめまして。 人材開発部/地域共創部 佐藤と申します。 約6年間、フィットネスの現場に立った経験を活かし 皆さまに(株)SHAREや、フィットネス部門のことを 分かりやすく記事にしてお伝えします。
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