高次脳機能障害のある方の復職|仕事に戻るための準備・職場の配慮・札幌の相談先
「退院したら、元の仕事に戻れるだろうか」
「日常生活はできているけれど、仕事となると不安がある」
「復職を支えたいが、会社として何を準備すればよいか分からない」
高次脳機能障害のある方の復職には、ご本人だけでなく、ご家族や職場もさまざまな不安を抱えています。
高次脳機能障害があっても、復職を目指すことはできます。
ただし、復職できる時期や必要な支援は、症状、仕事内容、職場の環境によって異なります。
大切なのは、ご本人の回復や工夫に加えて、仕事内容や働く環境を一緒に整えることです。
この記事では、元の勤務先への復職を中心に、準備の進め方、職場でできる配慮、札幌で相談できる支援先を紹介します。
日常生活ができることと、仕事を続けられることには違いがある
高次脳機能障害は、脳卒中や事故などによる脳の損傷を背景に、記憶、注意、段取り、感情の調整などに難しさが生じる障害です。
見た目や短い会話では分かりにくくても、仕事の場面では、次のような困りごとが表れることがあります。
口頭で受けた指示を忘れてしまう。
電話対応と入力作業を同時に進めると混乱する。
複数の業務の優先順位を決めにくい。
周囲の音や人の動きで集中が途切れる。
作業を続けると疲れやすく、ミスが増える。
家庭では自分のペースでできることも、職場では時間や正確さを求められたり、急な変更が入ったりします。
そのため、日常生活の様子だけでは、仕事で必要になる支援まで判断できないことがあります。
一方で、困りごとがあっても、手順や環境を調整することで取り組みやすくなる場合があります。
どのような条件なら力を発揮できるかを、具体的に確かめていくことが大切です。
復職に向けて進めたい5つの準備
復職の準備は、全員が同じ順番で進むものではありません。
生活を整える取り組みと職場との相談を並行しながら、ご本人に合った進め方を考えます。
1.復職の希望と、勤務先の状況を共有する
まずは主治医やリハビリテーション担当者、医療ソーシャルワーカーに、仕事へ戻りたい気持ちを伝えましょう。
勤務先の人事担当者や上司とは、休職期間、復職の手続き、連絡窓口などを確認します。産業医がいる場合は、連携方法も相談しておくとよいでしょう。
このとき、支援者に伝えたいのは、職種だけでなく実際の業務内容です。
同じ「事務職」でも、電話対応が多いのか、決まった入力作業が中心なのか、急な依頼が頻繁にあるのかによって、必要な準備は変わります。
ご本人の同意のもとで、医療機関と職場が情報を共有できるようにしておくことも大切です。
2.生活リズムや移動、疲労への対処を整える
復職の準備には、毎日の暮らしを安定させることも含まれます。
決まった時間に起きる、予定を確認して外出する、休憩を取りながら活動する。
こうした生活の積み重ねが、働くための土台になります。
通勤を想定した移動についても、安全性や疲れ方を確認していきます。
見ておきたいのは、一度できるかどうかに加えて、活動した日の夕方や翌日にどの程度の疲れが残るか、無理なく繰り返せるかという点です。
必要に応じて、自立訓練など、地域で生活の土台を整える支援も検討します。
サービスを利用できるかどうかは、ご本人の状況や自治体の判断によって異なります。

→ 自立訓練とは?機能訓練・生活訓練の違いや、就労移行支援との違いを解説
3.仕事に近い場面で、得意なことと必要な工夫を確かめる
復職に向けては、難しいこととともに、今できていることにも目を向けます。
「複数の指示には混乱するが、一つずつなら正確に進められる」
「口頭の説明は忘れやすいが、手順書があれば取り組める」
このように仕事内容と環境を具体的にすると、力を発揮しやすい条件が見えてきます。
医療機関や就労支援機関などと相談し、実際の業務に近い課題や場面を通して、作業の進め方、疲労、役立つ対処方法を確認しましょう。
4.仕事内容・勤務時間・相談体制を話し合う
復職に向けては、ご本人の状態と職場で対応できる範囲をすり合わせます。
担当する業務、勤務時間、休憩の取り方、困ったときの相談相手などを、できるだけ具体的にしておくことが大切です。
短時間勤務や業務量の調整を検討する場合も、会社の制度や業務上の条件を確認しながら進めます。
復職の可否や時期は、主治医の意見、産業医等の助言、実際の業務内容などを踏まえ、勤務先と調整する必要があります。
5.復職後も、負担や困りごとを見直す
復職して初めて分かる困りごともあります。
最初は順調でも、業務が増えたり、担当者が変わったりすることで、負担が大きくなる場合があります。
定期的に話し合う機会を設け、疲れ方や仕事の進め方を確認しましょう。
復職した日を一つの通過点として、働き続けられる条件を調整していくことが大切です。
職場でできる配慮の具体例
職場での配慮は、診断名だけで一律に決めるものではありません。
ご本人と相談し、実際の困りごとに合わせて試し、見直していきます。
| 仕事での困りごと | 配慮・工夫の例 |
|---|---|
| 指示や手順を忘れやすい | 指示を文章で残し、手順書やチェックリストを使う |
| 同時に複数のことをすると混乱する | 作業を一つずつ依頼し、電話対応などの割り込みを調整する |
| 優先順位や段取りを決めにくい | 作業の順番、期限、完了の目安を具体的に示す |
| 周囲が気になり集中しにくい | 座席や作業場所を調整し、不要な刺激を減らす |
| 疲れるとミスが増える | 作業量や時間帯を調整し、休憩を予定に組み込む |
例えば「ミスに気をつけて」と伝えるだけでは、何を変えればよいか分からないことがあります。
「この作業が終わったら、チェック表の3項目を確認する」といった形で、具体的な行動に置き換えると取り組みやすくなります。
また、指示を出す人や相談窓口を整理しておくことも役立ちます。
必要に応じて医療機関や障害者職業センターに相談し、ジョブコーチなどの支援の活用を検討します。
生活の中の「できた」が、次の挑戦につながる
「仕事に戻りたい」という希望には、収入に加えて、仲間とのつながり、自分の役割、これまで積み重ねてきた経験への思いが含まれていることがあります。
SHAREでは、その希望を支えるために、生活の中の「できること」「やりたいこと」にも目を向けたいと考えています。
以前紹介した、視覚障害と記憶障害のある方の事例では、スマートフォンの音声機能の活用や移動の練習を通して、生活の幅が広がっていきました。
好きだったカフェ巡りなどを再開し、その先に資格取得という新たな目標が生まれています。

チャレンジドジムでのお菓子作りの場面。本人の「やりたいこと」を、生活の中で実践していきます。
この事例は、元の職場への復職を達成した経過ではありませんが、生活を整え、自分で選び、行動できる経験が、次の挑戦につながっていく過程を伝えています。
仕事に戻る準備と、本人が望む暮らしを取り戻す支援。その両方をつなげながら、一人ひとりの次の一歩を考えていきます。
札幌で復職について相談したいときは
「まだ仕事に戻れるか分からない」という段階から、相談を始めることができます。
今の困りごとに応じて、相談先を選びましょう。
| 相談したいこと | 主な相談先 |
|---|---|
| 症状や疲労、医学的な注意点を確認したい | 主治医・リハビリテーション担当者 |
| 仕事内容や職場での配慮、復職の準備を相談したい | 勤務先の担当者・北海道障害者職業センター |
| 外出や予定管理など、日常生活の土台を整えたい | 医療機関の相談窓口・相談支援専門員・チャレンジドジムなど |
複数の相談先を利用する場合も、ご本人の同意のもとで情報を共有し、同じ目標に向かって準備を進めることが大切です。
通院先・入院先の医療機関
主治医、リハビリテーション担当者、医療ソーシャルワーカーなどに相談しましょう。
現在の状態と仕事内容を照らし合わせ、必要な準備や地域の支援先を検討する出発点になります。
北海道障害者職業センター
高次脳機能障害などにより、就職、職場適応、復職に支援が必要な方を対象に、職業相談や評価、職業準備支援などを行っています。
障害者手帳がなくても相談できます。
相談は予約制で、利用条件や支援内容は事前に確認が必要です。なお、国・地方公共団体等の職員など、サービスの対象外となる場合があります。
チャレンジドジム
SHAREが運営するチャレンジドジムでは、自立訓練(機能訓練)を通して、身体障害や高次脳機能障害のある方の生活・社会参加に向けた支援を行っています。
「退院後の生活や外出に不安がある」
「働くことを目指したいが、まず日々の生活を整えるところから相談したい」
そのような方は、見学や利用についてご相談ください。
ご本人・ご家族に加え、医療機関や相談支援専門員からの相談も受け付けています。
※サービスの利用には障害福祉サービス受給者証が必要です。
利用の可否や支援内容は、個別の状況に応じて確認します。
「働きたい」を、具体的な準備につなげるために
高次脳機能障害のある方の復職では、ご本人の状態と仕事内容、職場でできる工夫を結びつけることが大切です。
相談するときは、次の3つから整理してみてください。
どのような仕事や働き方に戻りたいか。
今の生活で、できていることと困っていることは何か。
勤務先に、誰と何を相談できているか。
うまく言葉にできなくても構いません。ご本人の希望を出発点に、医療・福祉・就労支援・職場が一緒に考えることで、準備できることが見えてきます。
SHAREも、その人が持つ力や大切にしていることに目を向け、暮らしと社会参加をつなぐ支援を続けていきます。
退院後の生活や、社会参加に向けた準備を相談したい方へ
チャレンジドジムでは、ご本人・ご家族、医療機関や支援者の方からの見学・利用相談を受け付けています。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。復職の可否・時期やサービスの利用については、主治医、勤務先、各相談窓口にご確認ください。
参考情報
参考:日本作業療法士協会「高次脳機能障害の復職、会社として配慮すべきことは?」などをもとに、配慮の例を整理しています。具体的な対応は、ご本人の状態と業務内容に合わせて検討します。
総合病院での臨床経験を経て、株式会社SHAREに入社し、医療・健康・介護福祉の共創に励んでいます。 私たちが地域の皆様のお役にどう立てるか? 自治体・医療機関・地域にお住まいの皆様のお力をお借りし、これからも様々なことに挑戦してまいります。
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